ざわざわと大勢の人の声が飛び交う。

今日は中学校の入学式。

式を終えた私は人の波に沿って教室へ移動するところだった。

体育館から教室へ向かう途中の渡り廊下で、校庭の周りに植えられた桜が満開なことに気がついた。

綺麗だなと見ていたら、前を歩いていた2人の女の子が、ヒソヒソとこっちを見て話し合っていることに気がついた。



「ねえ、あれ永遠じゃない?」

「げっ、最悪。なんでこの学校にいんの。私立行けばよかったじゃん。
ヤクザの娘なんて関わりたくないんだけど」



聞こえてしまった陰口。

小学校が一緒だった子たちだ。

その時から避けられたのは知ってたけど、口に出して言われるのは嫌な気分になる。

だけどしょうがない、本当のことなんだから。

私の父親はヤクザだ。それも日本最大規模の組織で組長をしている。

避けられるのは当たり前、気にしないこと。

自分に言い聞かせて教室に入った。