3ヶ月ほど経った頃「常木くん、私のこと好きじゃないよね」と言われた。



「ごめん」としか言えなかった僕は、実に不誠実な男だ。



彼女は否定して欲しかったのだろう、違うそんなことはない好きだよ、と。



 そう言えたら……そう、心から感じることか出来ればこの時期、悩むこともなかったろう。




 のちに久美ちゃんによって自己嫌悪に陥るほどの激情に振り回されるわけだが、

その頃は自分の気持ちがどこにあるのかもわからずにいた。




篠原さんと別れたあとも、たくさんの女の人と付き合った。

両親が愛情を注いでくれたように、ちゃんと僕にも愛情があることを確かめたかった。




しかし、そんなことは無駄だった。



求められれば応えたが、こちらかそんな気にはなれず───なれないからなのか、相手にいい顔をして最高の彼氏であろうとした。



だからせめて、満足してもらおうと要望に応える僕は、最高に都合のいい彼氏であり、最高につまらない彼氏だっただろう。




どう考えてもそんな時間、無駄にしかならない。そんな僕に付き合ってくれた女性にも申し訳がつかない。



僕は最低のラインでしか人に優しくできない。



───つまり、誰にでも、平等に、優しくない。



有り体に言えば、人に対してなんとも思わないのだから、要点だけおさえた完璧な笑顔をもってして人生と対峙していた。



それはまるで人間ではないなにか。道化のような処世術を身につけたということだ。