僕が中学生の時の話。



 先述の通り、僕は真也くんの兄である今や金髪の青年『環』と駄菓子屋に寄って公園で駄弁ることに青春を費やしていた。



環はお察しの通り、女好きであるからそれなりに僕以外との交流も多く、それに巻き込まれそうなことは多々あった。




「弥白はさあ、好きな人いないのかよー?」



 環がベビースターをちびちび食べながら言う。



「いないよ」


「今日さ、2組の篠原さんからお前の連絡先聞かれたんだけど教えていい?」

「だめ」

「だよなあ。つうかよ、ずるいよなあ俺がお前だったら女の子と遊びたい放題だったのに。そういうのなんていうか知ってるか」


「なんていうの?」


「宝の持ち腐れって言うらしいぞ〜」


「環には関係ないことだろう」



 環の痛いほどの視線を受けながら、僕は考えていた。



誰かを好きになるってなんだろう。



環はすぐに女の子を変えるし、とてもじゃないけれど参考にならない。




「じゃあさ、気になる子は今までいなかったのか?」


「そうだね。……あ、でも会ってみたい子はいる」


「アイドルとか?」

「違うよ。知り合いのおばあちゃんがさ」

「え、ばあさん⁉︎」


「ちょっとくらい人の話を聞いてよ。
そのおばあちゃんのお孫さんだって。いつも割とクールなおばあちゃんなんだけどね、お孫さんの話をするときだけは生き生きしてるんだよね。……だから、僕も孫が欲しい……」



 環が怪訝な顔をしていた。



「……熟女好きかと思えば、年下が好みで、その上孫が欲しいって。

その前に彼女だろ。

そんなの埒があかねえから、適当に付き合ってみてそれからだんだん好きになっていっても良いんじゃないか。
何事にも始めなきゃ始まらないだろ?」


「……そうかもなあ」



 そんな感じで軽く答えていたけれど、今から思えば結構、環の言葉に感化されていたのかもしれない。