「僕はね。女の子から嫌いだなんて言われても取り乱すような人間じゃないんだ……

でも久美ちゃん相手だと全然上手くできない」



弥白さんは項垂れる。



「君の兄さんに誘われてホストもやったけれど、女の子を見てもなんとも思わなかったんだよ」



弥白さんはだらんと力なく降ろされた手のひらを開き、そしてぎゅっと握り込んだ。



「お見合いした時も、女の子がニコニコしているところを見ても、冷たくあしらって泣いちゃった時も、なんとも思わなかった。

ああ笑ってるな、泣いてるな、って冷めた目で遠くから傍観している感じだったのに。

久美ちゃんは……

久美ちゃんだけは僕の視界に入るだけで、胸が痛くなるし、触りたくてうずうずする。

しばらく会えなかっただけでも心が空洞になったみたいに無味乾燥になって僕はおかしくなる。

君と二人で勉強すると言い出した時は嫉妬でどうにかなりそうだった」




 僕が久美ちゃんを襲いたくなるのは、もう本能みたいなものなんだよ……どうしても抗えない、と恐ろしいことを口にした。