小野枝 久美は勢いよく地面を蹴って屋上に体を滑り込ませた。





ジメジメとした嫌な暑さに、煌々と太陽がアスファルトを照らしつけている。




バタバタと駆けて、フェンスをガシャンっと勢いよく掴むと、私は大きく息を吸い込んだ。





早まってはいけないっ、と後ろから声が聞こえたような気がするが





「こんちくしょう! 教室の空気、悪すぎなんだよ〜〜!!」と町中響き渡るほどの全力で叫ぶ。




 はあスッキリした、と清々しい気持ちになった時、ぽんと肩に手が置かれた感触がした。見ると、白い手が私の肩を掴んでいる。




「ひいっっ」


飛びのいて後ろを確認する。


「うわあっ、なになに!」







そこには狐のお面をつけた男がいた。


その人も、私の声にビクッと驚いたようだった。