「今までさんざん束縛して嫌な思いさせといて、最後には好きだから好きな人教えろって?ありえないんだけど」



「ごめん。ほんとうに、ごめん。でもこれだけは教えてほしい」




彼の真剣な表情に負けた。



「…正直言って、その気はないよ」



「ほんとに⁈」



いや喜んでるのバレバレでしょ。見て呆れるくらいの酷さ。



「あ…ごめん」



言ってから気づいたのか、気まずそうに目を伏せる輝羅くん。



「なんでかわかるよね?」



と私は彼に尋ねた。



「…」



思い当たる節があるのか、黙り込む彼。



「それが答えだよ」




私は冷たく言い放った。




……もうこれ以上彼に言うことは無い。




そしてくるりと背を向けて歩き出す。




「…っ莉桜!」



彼の焦ったような声が聞こえてきた。でも私は振り向くこともなく、そして歩く速さを緩めることもなくスタスタと足を動かす。



すると、重いっきり腕を掴まれた。




私は振り返って彼をキッと睨む。




またこうやって、乱暴に。



「…もう二度と会わないって約束するから、最後だけ、抱きしめてもいい?」



切なげに見てくる彼に、一瞬私の心が揺らいだ。