家に着くと、玄関の鍵が開いていた。つまりそれはお母さんがいることを意味していた。




あれ?今日はパートじゃなかったの…?



もしそうだったら今の時間から行っても間に合わない。




私は玄関のドアを開けてお母さんを呼ぼうとした。



「おかあさ…」




「莉桜っ!!」




途端に勢いよくお母さんに抱きしめられた。




「ごめんね…っ、莉桜の気持ちを汲み取らずに自分だけで勝手に暴走してた。輝羅くんにDVを受けられていたと聞いて本当に莉桜に申し訳なく思ったわ…もっと私が莉桜の話を聞いていればこんなことにはならなかったのに…ごめんなさい…」



肩は痛かったけど、でもそんなのはどうでもよかった。



そんなことよりお母さんが私に気づいてくれた。



理由を聞くと、なぜかお母さんは私から離れて目を背けた。



「実は…久保くん、から教えてもらったの」



「え…?」




私はくるりと振り返って修斗くんを見る。




修斗くんは少し気まずそうに私達から目線を逸らした。




「久保くんって…そっか、覚えてないわよね」




お母さんが言った。




「莉桜の従兄弟の友達で、小さい頃はよく一緒にいたんだけど、いつだったか会わなくなっちゃってね。従兄弟を通じてまで連絡を取ってくれたから最初は疑がっていたけどこの子は信用できるなってわかったの」




私は驚きの目を彼に向ける。



まさか、修斗くんが…。




「久保くん、本当にありがとう。私と莉桜を救ってくれて」



お母さんは深々と頭を下げた。



「修斗くん、ありがとう…」




私もお母さんに釣られて頭を下げる。



「こちらこそ、お役に立てて幸いです」




そう言って笑った修斗くんの笑顔は、誰よりも純粋だった。