『輝羅くん』




私はLINEで彼を呼んだ。




いつもならバカみたいに…とか言っちゃいけないけど、すごくはやくLINEの既読がつく。



だから私が遅くLINEを返すと電話をかけてきたりする。



———



『なんではやく送ってくれないの』



って。



ほかにも、



『気まぐれすぎるんだよ』



とか、



『もっと俺のことを考えろよ』



とか言われたりする。



それに私はなにも反抗できずに



『…うん』



『…そうだね。ごめんね』



と言っているだけしかできなかった。




———



そんなことがあるから、私はあまりLINEを送らないようにしていた。



もちろん用があるときとか、聞きたいことがあるときとか、そういうときには使わざるを得ないと思うけど。でも、余計なことを送ると彼の気が済むまでやり取りを続けないといけないし、スタンプを使うと怒られるし。つくづく面倒な彼氏を持ったなと思う。



そういえば今日は既読がつかない。



そんなに私のこと避けたいの?



だったら振ればいーじゃん。



そしたら、前の…私の好きだった輝羅くんのことだって折り合いがつけられるかもしれないし。



でも私はどうしようもなく気になって、輝羅くんの教室に向かってみた。



「あのっ、すみません」



近くにいた男子に声をかけると、男子たちは何故か顔を綻ばせる。



「朝倉さんじゃん。何?」



「あの、有賀くんっています?」



と言うと、一気に顔が元通りに戻った。