「どこもぶつけてない?」
と心配そうに眉を下げてみてくる彼。
「あー…うん」
私は曖昧に頷く。
本当は輝羅くんに殴られたところがちょっと痛いけど、でもそれは久保くんのせいじゃないし。
「え、てか朝倉さん」
久保くんは私の腕を掴んだ。
「この手首の痕、何?」
そこを見ると、
…してもいないはずなのにリスカの痕がついていた。
「え…」
私はただ何も言えずに、目を見開いたままその場に立ち尽くした。
きっとやったのは…
「もしかして…朝倉さんし」
「違う」
遮った私の声は不思議と車内に響いた。騒がしかったはずの車内が一気に静まり返って、ちらちらと視線を感じる。
そうだ。ここが電車だって忘れてた。
「…ごめん。私ここで降りるから」
いたたまれなくて、私はちょうど開いたドアからさっと出る。
「ちょ、ちょっと」
わたわたと慌てた様子で久保くんも降りてくる。



