「き、らくん…?」
「あ、やっと出てきた」
なんてことない顔をしてスマホをポケットに入れる輝羅くん。
まるで当たり前かのように、そこに佇んでいた。
「なんでいるの…?」
「なんでって何も」
輝羅くんはちょっと首をすくめた。
「俺ら、付き合ってるじゃん」
「…そうじゃなくて、『一週間だけ会わない』って約束してくれたのに…」
「ああ。あれちゃんと聞いてなかった?
『放課後は』って話だよ」
彼は意地悪な笑みを浮かべる。
「…な…なにそれ…」
私の身体がガクガク震えだした。
「だって俺、会えないなんてなったら悲しいもん。もちろん、莉桜だってそうだよね?」
同意を求めるように彼は私の顔を覗き込む。
「…う、ん」
また、私は嘘をついた。
「萌映おはよ!」
「莉桜おはよ」
私ははやく輝羅くんと別れたくて、こんなにはやく学校に着いてしまった。
もう傷とかどうでもいいから、とにかく距離を置きたかった。
だから傷の痛みを抑えるより輝羅くんと少しでも離れる方を優先したかった。
そのために走りまくって走りまくって、彼から逃げてきた。
「てかあいつから聞いたけど、莉桜怪我したんだって?」
「…うん」
あいつとは、多分輝羅くんのこと。



