私は朝倉莉桜。



なんてことない普通の高校生。



友達もそれなりにいるし、部活だって楽しいし、学校生活だって充実していた。



あの時、までは…。



***



「朝倉さん」



教室で友達と喋っていると、とある男生徒が私の名前を呼んだ。



クラスには朝倉という名字はひとりしかいないので私だということはすぐにわかった。



なぜわざわざ私を呼んだのか。わからないけど、私はとりあえずその男生徒の後ろについていった。



「この辺でいいかな」



と、私にしか聞こえないような声で呟いた彼は、私と初めてまともに視線を合わせた。



「朝倉莉桜さん。俺、ずっとあなたのことが好きでした。付き合ってくれませんか」



その真剣な声と思いがけない言葉に、目が丸くなる。



でも、言うまでもなく私の答えはひとつに決まっているから。



「ごめんなさい。私好きな人いるから」



よく知りもしない人に付き合ってなんかいられない。



「…そっか。でもさ?そのために俺のことを利用したっていいよ。俺、少しでも朝倉さんと一緒にいたいって思ってるから」



「…ごめんなさい。そういう卑怯なことをするのは好きじゃないから」



「でも…」




「はいそこまで!」



と割り込んできたのは、私の友人である萌映(もえ)