ピンポーン。



私は緊張してインターホンを鳴らしたのに、輝羅くんの家のチャイムは間抜けな音を立てる。



「朝倉と申します。輝羅さんはいらっしゃいます、か…?」



それを言うか言わないかのうちに、誰かがガシャンと玄関のドアを開けた。



「き、らくん…」



出てきたのは輝羅くん本人だった。



輝羅くんの顔は無表情だった。



怖い。咄嗟に思ったのはそれだった。



私の知っている、あの優しい輝羅くんはどこにいってしまったの…?



そう思うほど、彼は輝羅くんらしくなかった。



「わっ」



無言のまま、輝羅くんは乱暴に私の手首を掴んで家の中に引っ張る。



そのまま、玄関のドアはバタンと閉まった。



でも彼はまだ私の手首を握ったままだった。



「輝羅くん、ごめん…私、別れたくない。輝羅くんが好きだから。ずっと好きだったのに、こんなに短い期間で終わらせたくないよ…」



私は輝羅くんを見上げて言った。必死で言ったはずなのに、その言葉はか弱い音にしかならなかった。



そしてそれに関して彼はなにも言うことはなかった。



ただ黙ったまま、彼は私の唇を奪う。



いつもとはまるで違う、噛みつくようなキス。



「痛…っ」



唇に痛みを感じ、直後に血の味がした。



唇を噛まれたんだ。そう理解するまで数秒かかった。



許可もしていないのに、私の服の下に手が滑り込む。



いつもは私の準備ができたか聞いてから触るのに、今日はなんの前触れもなかった。



抵抗しようとしたけど、とっくのとうに両手を掴まれてしまっているし、所詮私はか弱い女子。男子の力に敵うはずもない。



パチン。ブラのホックが音もなく外れたはずなのに、なぜか私の頭の中ではそう響いた。