「ねぇ」

 テーブルの反対側から声が飛んできた。

「あなたたちさっきからずっと仲良くお話してるみたいだけど、確か二人ともフリーだよね」

 姫、もとい菊池さんだ。

 彼女の横で本田くんが複雑そうな表情をしている。なぜか菊池さんの手が本田くんの腹筋に伸びていて私は心の奥底で小さな殺意を覚えた。

 菊池さん、触りすぎ!

 私の本田くんにこれ以上べたべたしないでよ!

 まあ、彼は私のではないけど。

 私の心など関係なく菊池さんが話を進めてくる。

「いっそ付き合っちゃえば? 加藤くん、そろそろ結婚したいって言ってたじゃない。まゆかも加藤くんが相手なら安心だよ。彼、真面目だし実家はお金持ちだし」
「……」

 えっ、これ何?

 私と加藤くんをくっつけようとしてる?

「おいおい、冗談きついよ」

 私が戸惑っていると加藤くんが眉をひそめた。

「確かに結婚したいって言ったけど誰でもいいって訳じゃない。僕にだって選ぶ権利はある」
「……」

 ええっ、何それ。

 まるで私が加藤くんにふられてるみたいなんですけど。

 まあ、別にふられたって構わないんだけどね。

 相手は加藤くんだし。