三人で雑談を交わしながら、駅前の大きなスーパーにやってくる。

 バレンタインデーが近いからか、スーパーの入り口付近はピンク色の可愛らしい装飾がされていて、宝石のようなチョコレートが並んでいた。

 私は上半身を屈めて、山吹色の包装紙に青いリボンの装飾がされた長方形の箱を手に取る。

「『ピノキオの夢想曲』だって。名前までおしゃれだね」

「ロマンチック……! こういうの、プレゼントじゃなくて自分で食べちゃいたくなりますよね~」

「蓮。私達が買うのはそういうのじゃないでしょ」

 竹市さんは両頬に手を添えてうっとりとする室谷さんを引きずって、奥のお菓子コーナーに向かう。

「本当は手作りのチョコを渡したかったんですけどね~」

 手作りのチョコか……。

 毎日二人分のお弁当を作ってる室谷さんは、きっとお菓子作りも上手なんだろうな。

 様々なお菓子が並ぶ商品棚を眺める室谷さんと竹市さんを数歩後ろで見ていると、室谷さんがぐるんと首を回して振り返る。

「それでっ、水葉先輩はいつ、誠先輩に告白するんですか?」

「……え?」

 パチパチと瞬きを繰り返す。

 告白? 誠先輩に? ……私が?

「あれ? 優樹先輩と付き合ってるって噂はガセじゃないんですか?」

「え、うん。あの噂は本当じゃないけど……」

 バレンタインの会話で出る『告白』という単語は、高確率で『愛の告白』を指しているのだろう。

 つまり、室谷さんが聞いているのは……。

 ぼふんっと効果音がつきそうなほど、急激に顔が熱くなってくる。

「え……えぇ?」

「水葉先輩、私達が気づかないとでも思ってたんですか~?」

「多分、森先輩も勘づいてると思いますよ」

 室谷さんはニヤニヤとこちらを見やり、その横の竹市さんも唇の端を上げてじっとこちらを見つめる。

 顔が、熱い。前にもこんなことがあった気がする。

 顔の熱を冷まそうと、外の気温で冷え切った手のひらを両頬に当てる。

 ……これって、まさか。

 日野川先輩の笑顔が脳裏に過ぎり、ぽつり、ぽつりと自分の思いを確認するように言う。

「私って……日野川先輩のことが、好き……なの?」

「え……」

 二人は目を点にさせて、あっけらかんと私を見つめる。