あっという間に終業時刻の6時になった。 「お疲れさま、矢沢さん」 「お疲れさまです」 あたしは奥の小部屋に入り、帰る支度をする。 上着をはおり、バッグを手に取ったとき 店長さんが入ってきた。 「そういえばまだ、時給のこととか話してなかったよね」 「あ……はい」 店長さんの顔が、ニッコリと笑った。 だけどどこか作り物めいた、不自然な笑顔。 得体のしれない不安が、胸をかすめる。 「あの、店長さん……?」 「矢沢さん、ワケありだもんね。俺でよければ協力するよ」 「え?」