昔体で覚えたことは簡単には忘れないみたいだ。


しばらく乗っているうちにだんだんコツが戻ってきた。


直哉のアパートに到着したときには、スムーズに運転することができていた。


「直哉っ!」


階段を駆け上がり、201号室のドアを乱暴に叩く。


「直哉いるんでしょう!?」


声をかけても返事はない。


でも、ここで引き下がるつもりはなかった。


今日は直哉が部屋から出てきてくれるまで、ずっとここにいるつもりだった。


「お願いだから出てきて! 返事をして!」


スマホで直哉に電話をかけると、着信音が聞こえてくる。


あたしは電話をかけっぱなしにしてチャイムを鳴らした。


中から聞こえてくるのは着信音とチャイムの音ばかり。


「お願いだからっ!」


そう言った時だった。


玄関の右側にある小窓が少し開いていることに気がついた。


あたしは背延びをして中の様子を確認する。


入って右手にあるのはキッチンだ。


その床に黒い人影が見えた。