家を出てすぐ、中学の入学祝いに買ってもらった自転車が視界に入った。


あの時の両親は少しでもあたしが自転車を平気になるようにと願っていたのだ。


あたしはジッと茶色い自転車を見つめる。


この自転車は一度も載っていない。


それ所か放置状態になっていて、蜘蛛の巣が張っていてさびまみれた。


あたしはスッと息を吸い込んで自転車にまたがった。


鍵はついたままだ。


何年ぶりかの自転車は思うように進まない。


フラフラ揺れて、危うさを残している。


それでもあたしは思いっきりペダルを踏み込んだ。


これなら直哉に会いに行くんだ。


自転車くらいでモタモタしている場合じゃない。


だってあたしは……直哉のことが好きなんだから!