涙がジワリと浮いて来そうになったとき、和室の戸が開いてお母さんが起き出してきた。


「あら、今日は早いのね」


あたしは慌てて笑顔を取り繕って立ちあがった。


「たまには朝ごはんでも作ろうと思って」


そう言ってキッチンに立つ。


「あらあら、どういう風の吹き回し?」


言いながらお母さんは嬉しそうだ。


「ただの気まぐれ。お母さんは座ってて」


あたしはそう言い、4人分の卵焼きを作り始めた。


1つは弟に。


こんなことしかできないけれど、少しずつ少しずつ、みんなにお返しがしたい。


過去は変えられないから、せめてこれ以上両親を悲しませないようにしたい。


その思いから、あたしは手を動かしたのだった。