キミと、光さす方へ

その瞬間あたしは道路に立っていた。


右手に坂道がある道路だ。


あたしはそこを自転車で通り過ぎていく。


ペダルを踏むたびに前に進むことが嬉しくて、どんどんスピードを上げていく。


心地いい風を感じていた時だった。


キキキーッ! 後方から自転車のブレーキ音が聞こえてきてあたしは咄嗟に止まり、自転車にまたがったまま振り向いた。


その瞬間だった。


ガンッ! と大きな音がして、白い自転車が跳ねあげられたのだ。


それは青空に弧を描いて落下していく。


太陽の光に反射した自転車がキラキラと輝いて、とても奇麗に見えた。


「仲村?」


声を掛けられてハッと我に返った。


外から「気をつけろよ!」という男性の怒号が聞こえてくる。


あたしは自分の胸を掴んで呼吸を整えた。


あの時のことこんなに鮮明に思い出すのは久しぶりのことだった。


「ごめん、大丈夫だから」


あたしはそう言って味のしないお茶を一口飲んだ。


「あたしも同じだよ」


「は?」


「あたしも人殺しなんだよ」


そう言うと、松本くんは怪訝そうな表情であたしを見てきた。