渚便り【完】

俺がうっすらと笑ってみせると、伊波は状況を理解するのに少しだけ間を置いてから、目を細めて笑った。
ああ、やっぱり俺はこの笑顔が大好きだ。


「え、すごいすごい!こんなところで再会できるなんて!」
「ん?もしかしてコイツがなぎさがよく話していた間瀬なのか?」


アニキとやらの言葉に頷いた伊波を見て、じわじわと嬉しさが込み上げてきた。
伊波が俺のことをよく話してくれていたという事実に、顔がにやけてしまいそうになる。

しかし再会早々だらしない面を見せたくないから、あくまでクールな振る舞いを心掛けた。
一体どんな話をしてくれていたのだろうか。
思えば俺と伊波はそこまで接触があったわけではない。
寧ろ当時の席順や愛想からしてみれば、林崎や作田の方が名伊波と絡んでいる時間が多かったんじゃないだろうか。
だからこそあの夏休みの冒頭にあった三日間は貴重な時間だった。


「でもどうして間瀬がここにいるの?」
「修学旅行で偶然来ててさ」
「なるほど!修学旅行先沖縄定番だもんねー!わぁ~、ほんと久し振りだよ!まさかこうして再会できるなんて思ってもいなかった!」