早く戻らないとみんなが心配しているかもしれない。
頭を下げてその場を立ち去ろうとした時だった。
「アニキー、遅れてごめーん!」
背中を向けている方から聞こえた声が、俺の鼓膜を揺らした。
たった一言だけで聞き分けられるほどに耳にこびり付いた心地の良いソプラノ。
もう二度と聞けないと思っていたその声に、懐旧の情が掻き立てられる。
呼吸をするのも苦しいと感じるほどに胸が締め付けられ、心成しか足も竦んできた。
これはきっと恐怖心ではなく過度な期待によるものだ。
俺の目の前にいるアニキと呼ばれた男が、逞しい腕をあげ「おー」と返事をする。
それを合図にしたかのように、俺はゆっくりと振り返った。
「久しぶり」
「……え……、あれ、間瀬?」
やはりそこにいたのは伊波だった。少しだけ大人びた顔に驚きの色を表している伊波。
あの頃は肩につくくらいまでしかなかった髪は胸元まで伸ばされていて、ふわりと潮風に吹かれながら宙を泳いでいる。
頭を下げてその場を立ち去ろうとした時だった。
「アニキー、遅れてごめーん!」
背中を向けている方から聞こえた声が、俺の鼓膜を揺らした。
たった一言だけで聞き分けられるほどに耳にこびり付いた心地の良いソプラノ。
もう二度と聞けないと思っていたその声に、懐旧の情が掻き立てられる。
呼吸をするのも苦しいと感じるほどに胸が締め付けられ、心成しか足も竦んできた。
これはきっと恐怖心ではなく過度な期待によるものだ。
俺の目の前にいるアニキと呼ばれた男が、逞しい腕をあげ「おー」と返事をする。
それを合図にしたかのように、俺はゆっくりと振り返った。
「久しぶり」
「……え……、あれ、間瀬?」
やはりそこにいたのは伊波だった。少しだけ大人びた顔に驚きの色を表している伊波。
あの頃は肩につくくらいまでしかなかった髪は胸元まで伸ばされていて、ふわりと潮風に吹かれながら宙を泳いでいる。



