「ちくしょぅ……」


なんで涙が出てくるんだよ。男のくせにカッコわりぃ。ダセーったらありゃしねぇ。なんなんだよ、この胸の痛みは。ウゼー、どっかいけ。
こんなの、こんなものッ……!


「っ、こんなの水平線の彼方に吹っ飛ばせば……へっ……ちゃら、だ……」


まるで蚊の鳴くような声はさざ波の音にさえ掻き消されてしまったけれど、俺がアイツを好きでいた気持ちは確かにここに存在していたのだ。
それを知るのは俺自身と、この海だけだろう。