人生初の愛の告白が手紙越しで、しかも結局本人に伝わっていないなんてカッコわりー。
すぐに恥ずかしさを通り越して呆れが込み上げてきた俺は、薄っすらと空笑いを浮かべるしかなかった。
しかしその下にあった少し丸みを帯びた字に気が付いた時、俺は目の奥が熱くなるのを感じた。

“私もここで間瀬と過ごした時間、すっごく楽しかったよ。こんな私のことを好きでいてくれて本当にありがとう”


「……な、んで……」


なんでこんなものが書き足されてるんだよ。
アイツ、沖縄に帰る当日にもここに立ち寄っていたのかよ。
だったら言ってくれれば、見送りくらいできたのに。
見送りしたところで辛いだけなの分かってるけどさ、少しでも伊波と一緒にいれる時間が欲しかったんだよ。

あの時だって本当は、家族よりも俺といることを優先してくれたら、なんてアホみたいに図々しいことを考えてた。
背を向けて行ってしまう伊波を呼び止めることができたのなら、それはどんなに勇気が必要で、だけどその分幸せなことだろうかって、臆病な俺はただ心の中で叫んでた。
でもそんなの知る由も無い伊波の背中は小さくなるばかりで、走り去るその姿が建物の陰に消えてしまった時、俺の中にあった砂糖水のような淡い幸せも一緒に失われていく気がした。