「ばあちゃん、ありがとな!これからもたまに買いに来るから!」


お礼を告げてから、雑に折りたたんだ手紙をポケットに忍ばせ、小瓶を手に駄菓子屋を飛び出す。
再び自転車に乗り、間も無くして海岸沿いの道に到着する。

思ったけどこの金平糖、袋にでも移し替えておけばいいだけの話で、何も今全部食べる必要なんてなかったんじゃないのか?
虫歯になったら伊波のせいにしてやろう。
なんて、責任押し付けたところで、もうアイツはここには帰って来ないけどな。

切ない気持ちを振り払うかのように夜風の中を全力疾走して、すぐにテトラポッドの上にやってきた。
呼吸を整えながら、夕暮れ時とは打って変わり不気味な様子の海を見下ろす。
気を抜いたら吸い込まれてしまいそうなほどの、まるで墨を流したような真っ暗闇の海に、少しだけぞっとした。

俺は小瓶を握る手に力を込める。
伊波にあやかるようにして綴った伊波への手紙。
好き、というたった二文字の言葉すら伝えられなかった駄目駄目な俺の想い、せめてこういう形で吐き出させてくれ。