すっかり日が落ち、どちらも濃い青に染まった空と海はいよいよ一体化しようとしていた。
次第に水平線の位置がハッキリしなくなってくる。

俺はと言えば再び茫然と海を眺めていた。
体も思考も上手く働かないのだ。

結局、俺は別れを告げた伊波の後ろ姿を見つめていることしかできなかった。
訪れた凄絶な虚脱感。
最後まで臆病だった自分に嫌気が刺して、その場に力無くうな垂れた俺は、半ば放心状態に陥った。
とめどなく溢れてくる感情にはいずれも伊波が絡んでいて、その大半が後悔の念であった。
失ってから嘆いたところで後の祭りだというのに。
自分の想いに気付いていながらこのザマとは、嘲笑われても当然の結果だろうな。


「……帰るか」


ぽつりと呟いて立ち上がる。
こんなところにジャージ姿のままうろついてたら補導されるかもしれない。
ただでさえ身長のせいで警察の目につきやすいし。

未だに気分は晴れないけれど、だったら尚のことさっさと帰宅して寝てやる。
その方が気も楽になるだろう。明日も部活だ。ちゃんと休まないと。
自転車のスタンドを蹴り渋々とペダルを踏んだ。
ふと目をやった先の駄菓子屋はまだ明かりがついている。