視線を落としていた俺が、まさかと思い顔を上げると、


「……でも、アニキが幸せになってくれたなら、私も幸せだからッ、……そう思えるようになったからぁ……沖縄に帰ったら、また、仲良く、っ、してくださいね……!……、大好きでした……なぎさ、より……ッ」


最後の方は絞り出したような声で手紙を読み終えた伊波は、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
いつだって笑顔を絶やさず、クラスの中心となり希望を与え続けてくれていたあの伊波が。
周囲が喜びのあまりに流した嬉し涙にすら釣られることのなかったあの伊波が。
確かに目から涙を零していたのだ。
震える手はシワができるくらい手紙を強く握り締めている。

やっぱり、辛かったんだよな。
……やっぱり、ってなんだよ。
分かっていて伊波にこんなことさせたのは他ならぬ俺だと言うのに。

自分の不甲斐無さを情けなく思いつつも、涙でくしゃくしゃになった顔を俯けている伊波に声をかける。


「ごめん。俺バカでチビだから気の利いたこと言えないけど……」
「……っ、」
「伊波、お前頑張ったよ」


伊波は俺の励ましに返答するかのように、また自分自身の頑張りを認めるかのように、何度も何度も首を縦に振った。
黄昏時はもうじき終わろうとしている。