年の差という不可抗力や玉砕という恐れから、私は気付いてしまったアニキへの恋心をずっと胸の内に秘めていた。
断じてずっと片想いのままでいいだなんて思ってはいない。だけど想いを伝えて拒絶されてしまうのが怖かった。
募る想いに比例して月日ばかりが過ぎていく。

中学への入学を控えていた頃、アニキを前にしてはいつ告白しようか迷いに迷って、結局出す答えはいつも決まって「今はやめておこう」である自分は、意外に臆病な人間だったんだなと思わず自嘲気味に薄笑いした。


「あ、アニキまたあのお姉さんと一緒にいるね」
「うん」


空き地でボールの蹴り合いをしていた友人の言葉に私は頷く。
向こうの道にはすっかり成人男性のオーラを纏っているアニキ。そしてその隣にはやんわりと微笑む女性。
アニキは私達の視線に気が付くと、手をあげて軽く挨拶をしてくれた。
でもそれだけ。こちらに来ることなくその女性と二人、どこかへ歩いて行ってしまった。


「あれきっと彼女だよねー」


今度の友人の言葉には、首を縦に振ることを躊躇った。
薄々気づいていたけれど、目の前の現実を自分自身で肯定したくなかったからだ。

ある日を境に、アニキがさっきの女の人と一緒にいる光景を多く見掛けるようになったのは事実。
でも私はそれを認めたくなかった。認めてしまえば終わりだと思った。