「またゴール止められちゃった……」


せっかくアニキが教えてくれているのに、思うようにいかなくて落ち込んでいる時は、ポンと頭に手を置いて持ち前の笑顔で励ましてくれた。
逆に上手にシュートが決まった時はワシャワシャと頭を撫でてくれた。

どっちにしろ頭に触れられるわけだけど、私はこうされることが大好きだったから構わない。
アニキの大きくてゴツゴツした逞しい手は、もう少年の面影なんてなくて大人の男の人の手だなぁ、といつも思っていた。


「――うわあ!?」


ある日、練習中にアニキの蹴ったボールが誤って私の太ももに直撃するという事故が起きた。

正直結構痛かった。だってあのアニキが蹴ったボールだ。
小学生である私達に比べて威力があるのは当たり前のことである。
しかし非があるのはよそ見をしていた私だ。


「大丈夫かなぎさ!?ごめんな、痛かっただろ!?」


地べたに座り込んだ私のもとに慌てて駆け寄ってきたアニキの表情は、珍しく焦りで満ちている。
この状況にも関わらず新鮮なそれを面白く感じた私は、頭を押さえながらとびっきりの笑顔を作って見せた。