両想いだなんて自惚れた妄想をしているわけではなかった。
俺からしてみれば伊波は他の女子とは違ってあまり恋愛事に関心があるように見えなかったし、まして俺に対しそういう素振りを見せてきたことなんて微塵もなかった。

だけど他に好きな人がいると告げられては、ハッキリと失恋したも同然だ。
不意打ちでやってきた決定打に俺は複雑な気持ちにさせられる。

言葉に詰まっていると、どこからともなく正午を知らせるサイレンの音が聞こえてきた。


「やべ、そろそろ部活行かねーと!」
「おー、頑張ってこーい」


慌てて立ち上がると、伊波はにこやかな笑顔でガッツポーズを作った。


「まったねー!」


家を出た後に公園で寄り道したからか、ここまで到着するのに時間をかけてしまったせいで思いの外時間が無かった。
滞在時間が足りな過ぎたことを悔やみつつ、背を向けて自転車の方へ走る俺にかけられたその言葉。

それにどんな意味が込められていたかなんて、そんなのアイツしか知らない。