「なんでここに来てんの?」


斜め前を歩く伊波に素朴な疑問をぶつけてみる。


「ここ海があって駄菓子屋があるでしょ?地元に似たような場所があってさ。そういう雰囲気好きなんだー」
「ふーん」


またひとつ伊波のことを知れて密かに嬉しく思う。
伊波のこの情報を知っている人は他に誰がいるのだろう。クラスメイトのみんなはきっと知らない奴が大半だろうな。そう考えるとみみっちい優越感に浸れる。

伊波は軽快な足取りでテトラポッドの方に進んだ。
俺は道が砂地になる前の場所に自転車をとめ、不安定な足場に気を配りながらテトラポッドの上に座る伊波の傍まで駆け寄る。


「ほい」
「え」
「あげる」


突然差し出されたのは棒状のふ菓子だった。
俺がそれを受け取ると、伊波は同じものを袋から取り出してサクッと食い付いた。
俺が来なけりゃ自分で二本食べる気だったのだろうか。

少し距離を置いたところに腰かけ俺もふ菓子を口する。
結局俺が昨日買って帰った駄菓子は酢昆布だけだったから、このふっくらとした軽い食感はとても懐かしく感じられた。
何より、伊波から貰えたことが嬉しかった。