「じゃあ投げるよー?……それっ!」


伊波が大きく振りかぶる。
弧を描いて宙をなぞった小瓶が波に飲まれていく様子を無言で見据えていた。
二人で半分ずつ書いたたった一言のメッセージを、もし未来の俺達が見つけたら一体どんな反応をするだろうか。
そんな現実的ではないことを思いながら水平線を眺めていたら、伊波が視線を海に留めたまま言葉を紡いだ。


「ねえ間瀬」
「なんだ?」
「こんなこと言っちゃ駄目なんだろうけど……」


俺たちはどうしようもなくガキだった。
だからこそ、まだ夢を見ていたかった。
しかしもう時期それは叶わぬものとなる。
それを分かっていたから、伊波は言ったのだ。


「離れたくないなぁ……」


その消え入りそうな声を聞いた時、俺は胸が張り裂けそうになった。

昼間は透き通ったエメラルドグリーンに見えた水面は、暖色の絵の具を混ぜ合わせたような色を映し出している。
キラキラと光りを反射させている海は、まるで俺達のこのひと時を飾るかのように輝いていた。