夏休み初日。
顧問がたまには息抜きも必要だということで珍しく部活が休みだった俺は、林崎に誘われ作田と三人で釣りに来ていた。

親の影響で大の釣り好きである林崎はこのスポットに来るのは初めてだと胸を躍らせていたようだったが、いざ竿を振ってみるとあまりの収穫の無さにガッカリしている。
一本しかない竿を交代制で回すも、結局ボウズ。林崎はこの場所はハズレだだの、今回の餌は合わなかっただの、今日は潮の流れが悪いだの、あれやこれや言い訳を並べていた。
その傍ら俺と作田は携帯ゲーム機で遊んで時間を潰していた。

しばらくして、すっかりテンションが落ちたところでやっと諦めのついた林崎が片づけを始めたから、俺と作田もそれに従った。
林崎が釣り用具を自転車に固定したのを確認し、海を離れようとペダル蹴り始める。


「あそこにあるのって駄菓子屋か?」


自転車を漕ぎ出してから少しして、急にブレーキ音を鳴らした作田が指差した方を見ると、向こう側に古臭い家の前に菓子屋と書かれた看板が確認できた。
紅白ののれんはどこか昭和の香りが漂っている。
手ぶらで帰るのもなんか悔しいよな、という林崎の提案に頷いてから俺はペダルを踏む足に力を込めた。