地味で根暗で電信柱な私だけど、あなたを信じていいですか?

 この声はエレベーターホールのほうからだろうか。

 何だか胸がざわざわする。

 私は声の聞こえたほうへと足を向けた。隣の部屋のドアの窓は見ないよう注意しながらその前を通り過ぎる。

 エレベーターホールは通路より照明が絞られており、空気もひんやりと感じられた。

 歩くとコツンと足音がやけに響く。それとも私の不安がそう聞こえさせているのだろうか。

「……!」

 エレベーターのすぐ傍で男女が抱き合っている。

 ふんわりとさせた栗色の髪の女の子と佐藤さんだ。それはもう疑いようもないくらい佐藤さんだった。