「とりあえず先に進んでみようか」
諦めたように蓮くんがつぶやく。
「うん」
立ち止まっていても、靄が晴れる気配はない。わたしたちはしっかり手を繋いだまま慎重に足を進めた。
「黄砂でもないし、何なんだろうな…」
不安を紛らわせるように、蓮くんがぶつぶつと口にしている。
彼と繋いでいないほうの手を伸ばしてみるけど、虚しく空を掻くばかりだ。
あ…足元の感触が少し変わった。靴の裏から先ほどより凹凸を感じる。
道の途中で舗装が変わる…なんてことある?
というか、舗装だけじゃない。
「なんか空気が違くない?」
わたしより先に蓮くんが口にする。
「うん違う」
空気が澄んでいる。登山をしているときを思い出す。緑を含んだしっとりとした新鮮な大気だ。
前方がぽうと明るい。ほっとすると同時に、頭の中で警鐘が打ち鳴らされる。
どうして日が沈んでいる時刻なのに、明るいんだろう。それともなにか光源があるのか…
それでもわたしたちはその光に向かって歩くしかなかった。しぜん足が早くなる。
あと少しだ。
立ちこめる靄を抜けて、光の中へ———
諦めたように蓮くんがつぶやく。
「うん」
立ち止まっていても、靄が晴れる気配はない。わたしたちはしっかり手を繋いだまま慎重に足を進めた。
「黄砂でもないし、何なんだろうな…」
不安を紛らわせるように、蓮くんがぶつぶつと口にしている。
彼と繋いでいないほうの手を伸ばしてみるけど、虚しく空を掻くばかりだ。
あ…足元の感触が少し変わった。靴の裏から先ほどより凹凸を感じる。
道の途中で舗装が変わる…なんてことある?
というか、舗装だけじゃない。
「なんか空気が違くない?」
わたしより先に蓮くんが口にする。
「うん違う」
空気が澄んでいる。登山をしているときを思い出す。緑を含んだしっとりとした新鮮な大気だ。
前方がぽうと明るい。ほっとすると同時に、頭の中で警鐘が打ち鳴らされる。
どうして日が沈んでいる時刻なのに、明るいんだろう。それともなにか光源があるのか…
それでもわたしたちはその光に向かって歩くしかなかった。しぜん足が早くなる。
あと少しだ。
立ちこめる靄を抜けて、光の中へ———



![he said , she said[完結編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1737557-thumb.jpg?t=20250401005900)