奥手な二人の両片思い

電車に乗った私達。

つり革に掴まり、引き続き漫画の話をしていると、「漫画のお礼がしたい」と突然言われた。



「嬉しいけど……さっき助けてもらったし、大丈夫だよ」

「いやいやそんな! 綿原さん、何か欲しい物ある?」



欲しい物……物じゃないけど、勉強を教えてほしい。特に数学。

でも難しいよね。数学何個もあるって言ってたし。

それか……下の名前で呼んでほしい、なんて。
図々しいか。



「物じゃなくても、どこか行きたいとか、勉強したいとか」

「えっ、いいの?」

「うん!」



彼の口から勉強という単語が出てきて、つい反応してしまった。



「あの、数学が苦手だから教えてほしいなぁって。いいかな? 時間大丈夫?」

「もちろん! まだテストまで時間あるし、得意だから任せて!」

「ありがとう……!」



ルンルン気分で学校に向かい、下駄箱で靴を履き替える。

すると。



「早く着いたからさ、今から教えようか?」



ええ⁉ 今から⁉ てっきり放課後にやるのかと思ってた!

まだ心の準備ができてないよ。

でも、せっかく朝から一緒に勉強できるチャンスだし……。



「じゃあお願いします」

「よし! んじゃ早速行こ~!」



ハイテンションの彼と一緒に、2年4組の教室へ向かった。