「顔色悪いし、無理しないで5時間目休んだら?」

「大丈夫です。授業に集中できないくらい酷くはないので」



先生からお湯が入ったマグカップを受け取り、手を温める。

気遣いはありがたいけど、くしゃみが出るくらいで休みたくない。



「それなら帰り、家まで送るよ」

「そんな、悪いですよ。遅くなったら奥さんに心配かけちゃいます」



海先生は、俺がほぼひとり暮らし状態なのを知っており、放課後は駅まで送ってくれたり、学校が早く終わる日は、時々遊びに誘ってくれるんだ。


厚意に甘えているけれど、今年の春に先生が結婚したので、最近は遠慮している。

新婚ホヤホヤだから、あまり遅い時間までお世話になると奥さんに申し訳ないし。



「でも、体調が悪い生徒を放っておけないよ。もし電車内で倒れたらどうするの」

「冬川くん、ここは先生の言う通りにしたほうがいいよ」



先生と水沢くんから心配そうに見つめられ、心が揺れ動く。



「……じゃあ、お願いします」







「お待たせ。大丈夫?」

「……はい」



5、6時間目、寒さに耐えながら授業を受けたものの。
悪化してしまい、もう笑う気力もないくらい限界がきていた。