ツーンとすました顔をしている詩恩をムッと睨む。

お世辞の1つくらい言えば、こんなに腹立つことないのに!



「『ハムスターにも似てるね』って言えばいいのに」

「カツサンドを頬張るハムスターがどこにいるの?」



あぁ言えばこう言う。

詩恩がこんなに口喧嘩強かったなんて……。
隙なさすぎ! この宇宙オタクめ!



言い合うこと10分。チャイムが鳴ったので中庭を後にした。

校舎に戻ろうとしたところで、「あ、そうだ」と詩恩が口を開く。



「推し活動にあれこれ言うつもりはないけど、黒瀬先輩を本気で好きになるのはやめといたほうがいいよ」

「ならないよ。憧れてるだけだし。何、やきもち?」

「違うよ。あの人は明莉が思ってるような人じゃないから」



なにそれ。本当はものすごく腹が黒いとか?
上っ面の笑顔を振りまく詩恩よりもずっとマシだと思うけど。

勝手に想像を巡らせていると。



「……あの人、見かけ倒しだから」

「えっ……?」



見かけ倒し? あの優しい黒瀬先輩が?
そんなの……そんなの嘘に決まってる。