「……そんなにおかしい⁉」

「だって、頭撫でたら顔赤くなったから。かーわいー」



珍しく声を上げて笑う姿に戸惑いを隠せず、目を見開いた。

今、可愛いって聞こえたような気がしたんだけど……?



「とにかくっ、約束したんだからちゃんと守れよ?」

「へ? 何を?」

「『もうしつこくしない』って約束」



瞬時に我に返り、ゴホンと咳払いして念押ししてきた詩恩。

少し焦った様子でその場から去ろうとしたので、腕をガシッと掴んで引き止めた。



「ちょっと待って! さっき私のこと可愛いって言ったよね⁉ ねぇ言ったよね⁉」



逃がすまいと言わんばかりに両手に力を入れる。

あの冷たくて意地悪ばっかり言ってくる詩恩が「可愛い」って、幻聴じゃないよね……⁉



「……もう約束忘れたの?」

「へ?」

「『大声で騒がない』って約束」



しまった……!
言ったそばから早速破ってどうする!



「ご、ごめん。っていうか詩恩こそ。『もう冷たくしないで』って私、言ったよね?」

「うん。でも『ありがとう』って言っただけで、『冷たくしないよ』とは言ってないよ」



こっ、こいつ……っ!