ペコペコと頭を下げながらヘアピンを受け取る。

全然見つからないと思ってたら、拾ってくれてたんだ。



「本当にありがとうございました! これ、お気に入りだったんです!」

「そうだったんですか。それは良かったです。
もうなくなさいでくださいね」


「あっ……」



感謝を伝える私に優しい笑顔を見せた彼。
「じゃあ」とお辞儀をして、小走りで去っていってしまった。

名前、聞きたかったな。







「それでね! もう顔面が美! って感じだったの!」

「そんな美少年だったんだ」

「うん! もう性別を超えた美しさって感じだったよ……」



ホームルーム後の教室にて。
自己紹介と委員会決めが終わり、時間が余ったので、千夏に先程の男の子について熱く語った。

イケメンに会っただけでここまで興奮することはないんだけど……。

なんとなく、昔好きだった子に似てたから、テンションが上がっちゃったんだ。



「それで、名前は聞いたの?」

「ううん。走り去っていっちゃったから聞けなかったの」



すぐ気づいて下りたから良かったものの。
もし私が来なかったら、彼はあそこでずっと待ち続けていたかもしれない。