いそいそとバッグからスマホを取り出す。



「交換する必要ある? 母親同士で繋がってるでしょ」

「そうだけど……毎回教室に行くのも大変だし」

「それはお前が一方的に来てるだけだろ」

「し、詩恩だって! 私の教室に行く機会が来るかもしれないし!」

「多分ないと思う」



淡々と言い返されて腹が立ってきた。

友達なのに、どうして渋るかなぁ。



「嫌なの? もしかして彼女がいるとか?」

「違うよ。お前と交換したらしつこそうだから嫌ってだけ」



はぁぁぁ⁉ なんて失礼な……!

っていうか、こんなお腹真っ黒なやつに彼女なんているわけないよね。



「勝手に決めつけないでよ! あとお前って言わないで!」

「ごめん、悪かった。わかったから静かにして」



我に返って周りを見ると、登校してきた生徒達が私達を見ていることに気がついた。

しまった……また騒いじゃった……。



「……ほら、交換するんじゃないの?」

「えっ……いいの?」

「うん。このまま廊下に居座られても困るから」

「ありがとう……!」



落ち込む私を見かねてスマホを取り出した詩恩。
電話帳とメッセージアプリに彼の名前が追加された。

やったぁ……! 一歩前進!

教室に戻ってもニヤけは収まらず、1日中口角が上がりっぱなしだった。