その日の放課後──黒瀬先輩を校舎裏に呼び出した。



「突然呼び出してすみません。あと……長い間待たせてしまってすみません」

「大丈夫だよ。今日何も予定なかったから」



授業終わりにいきなり連絡したのにも関わらず、ニコニコしている。


穏やかな表情を、これから悲しい表情にさせてしまうのかと思うと胸が痛い。

でも言わなきゃ……。



「私……黒瀬先輩とは付き合えません。ごめんなさい」



深々と頭を下げた。



「先輩のことは好きです。けど……異性としてではなく、憧れとしての好きなんです。本当にごめんなさい」



言い終わった途端、涙がボロボロ流れてきた。

落ちた涙が地面のアスファルトを濡らす。



「……顔上げて?」



頭の上から先輩の声が聞こえ、ゆっくり顔を上げる。



「返事してくれてありがとう」



優しくハンカチで涙を拭ってくれた。

フラレたのに……どうして笑っていられるの?
泣きたいのは先輩のはずなのに。



「本当にごめんなさい……これからも1人の後輩としてよろしくお願いします」

「うん。よろしくね」



最後まで笑顔を見せた黒瀬先輩は、私が泣き止むまでの数分間、ずっと背中を擦ってくれた。