「あぁ、最初は気まずかったよ。だから前もってお互いに、『痛かったらごめんね』って謝り合った。
水沢くんってば、練習の時も全然手加減してこないんだよ」



「負けず嫌いすぎるでしょ~」と笑顔を見せた詩恩。

良かった。友情は壊れてないみたい。



「明莉は女装コンテスト観に来るの?」

「うん! 今年は午前中に店番だから行けるよ!」

「そう。今年こそは優勝しようと思ってるから楽しみにしててよ」



おおお、なんか自信ありげだ。
去年よりもパワーアップしてるのかな? 楽しみ。


チャイムが鳴り、教室に戻ろうとベンチを立つと、「あのさ……」と詩恩がポツリと呟いた。



「前に俺にさ、『もっと頼れよ』って言ってたよね」

「う、うん」

「じゃあ、俺が優勝できるように応援してくれる?」

「えっ」



それってまさか……。



「ダメ?」

「いや⁉ 応援するよ! 頑張って!」

「ありがとう」



ビックリしたぁ。

まさか、あの自立しまくっている詩恩が頼ってくるなんて。

嬉しいんだけど……初めての頼み事が、女装コンテストの応援って。やっぱり変わってるなぁ。