冷めた目で吐き捨てた彼は、腕を掴んでいた私の手をそっと放し、スタスタと早足で去っていった。


うるさくて、恥知らず……⁉

なによ! 私だって、こんな冷たくて不機嫌丸出しの男の子なんて知らないんだから!



「詩恩のバカヤローー!」







「なんっなのあいつ!」



放課後。
千夏と一緒に自転車を押しながら帰路に就く。



「私が一昨日の朝、どれだけ恥ずかしい思いをしたか知らないくせに!」

「ほぼ全員明莉見てたもんね」



あー! 腹立つー!
いくら友達だったとはいえ失礼すぎない⁉
「あんたこそ礼儀知らずだよ!」って言いたいくらいだよ!



「まぁ、気持ちはわかるけどさ、一応学校だって公共の場なんだし。場をわきまえないと」

「……そうだよね」



指摘を受け、声がしぼんだ。


さっきもバカヤローって叫んだもんなぁ……。
自覚しているけど、つい声が大きくなっちゃうんだよね。

1年生も入ってきたし、先輩らしく後輩のお手本にならないと!



「明莉は押しが強いからなぁ」

「っ……も、元はといえば詩恩が! 『明莉ちゃんは笑顔が可愛いから、たくさん笑うといいよ』って言ってきたんだよ⁉」