「あれ? 顔赤くなってるよ? もしかして思い出しちゃった?」



まじまじと顔を覗き込んできた詩恩と目がパチリ。

先程は片方だけだった口角が両方上がっていて、両頬にくっきりえくぼが現れている。



「本当に好きなんだね~」

「いや、友達としてだよ……」

「じゃあどうして顔が赤いの? 正直に言いなよ。男の子として? 友達として?」



……っもう! 本っっ当ムカつく!

自分だって気づいてるくせに! 私にわざと言わせようとしてる!


前言撤回! やっぱこいつ腹黒だ……!



「おーい明莉ちゃーん、聞こえてますかー?」

「……っ!」



また、ちゃん付けして……!



「そ、そんなの! 男の子として好きに決まってるでしょ⁉ じゃなきゃキスなんてしないよ!」



バン! とテーブルを叩いて言い放った。


し、しまった! ここお店だった……!


……待って。
さっきとんでもないことを口走ったような……。


ハッと我に返ると、目の前にいる彼が目を丸くして固まっている。



「しっ、失礼しました……っ!」



全身がカーッと熱くなるのを感じた私は、テーブルに千円札を置いて小走りで店を後にした。