詩恩side



「星くん、先にいいよ」

「いやいや、ここはレディーファーストってことで。お先にどうぞ」

「いいよ! 先入りなよ! 私時間かかるし。なら、千夏が先に入ったら?」

「いや、私も時間かかるし」



夕食を終えた7時過ぎ。
今、リビングでお風呂の順番決めの真っ最中。

しかし、見ての通り、みんな譲り合ってて全然決まらない。


異性だからお互いに気を遣ってるんだろうけど、早く決めないとお風呂が沸いてしまう。



「えー……じゃあ、詩恩が先に入ってよ! 家の主だし!」

「俺はゆっくり入りたいから最後でいいよ」



明莉に返答し、自分の部屋に戻ろうとドアノブに手をかけると、健が肩を掴んで引き止めてきた。



「おい詩恩! なんかさっきから顔怖いぞ? 悩み事があるんなら、お風呂で相談に乗ろうか?」

「結構です。つーかお前シャワー派だろ。俺、湯船に浸かりたいから先に入れ」



肩にある手を振り払ってドアを開け、早足で自分の部屋に戻った。

……強く言いすぎたかな。



「詩恩? お風呂沸いたよ」

「あぁ、俺最後に入るから。みんなリビングにいるから言ってきて」

「はーい。了解」