あ、気遣ってくれてたんだ。

そのわりには随分静かだな。
静かすぎるのも逆に落ち着かない。



「推しに鬼電してない?」

「し、してないよ!」

「自撮りとか動画送ってない?」

「送ってないって!」



意地悪っぽく聞いたら、顔を真っ赤にして反論された。

良かった。いつもの明莉だ。



「詩恩はやきもち妬かないの?」

「なんで?」

「だって、今までずっと『詩恩! 詩恩!』ってかまってたのに、今度は『先輩! 先輩!』ってなったら寂しくない?」

「全然。にしてもすごい自意識過剰だな」



明莉が誰と仲良くしようが、嫉妬することはないけど、傷つくのは見たくない。



「もう1度言うけど、本気になるなよ?」

「大丈夫だよ! でもどうして? 見かけ倒し以外に何か理由があるの?」

「……先輩には忘れられない人がいるから」



去年の秋頃──海先生に相談しようと保健室に向かうと、先に黒瀬先輩が相談していた。


「人気者の黒瀬先輩が相談?」と思って、こっそり聞き耳を立てたら、『好きな人を忘れられなくて困っている』と。


しかも相手は数年前に他界。

今も気持ちを伝えなかったことを後悔しているらしい。