私は、下駄箱の扉に手をかける。


大丈夫。

大丈夫。

全部気のせいだ。


そう、自分に言い聞かせて、私は下駄箱を開けた。


どさり。


下駄箱から足元へ、何かが落ちてきた。

足元を見ると、そこには、ゴミにしか見えないものが散乱していた。


飲みかけの牛乳パック。

汚れきった汚い雑巾。

くしゃくしゃの体操着。



「え……っ」



落ちてきた体操着を拾えば、牛乳臭くて思わず顔をしかめる。

体操着のネームを恐る恐る見れば、そこには『北澤』と書かれていた。


どこからどう見ても、私の体操着だよね……。

ひどい……。


“いじめ”

その3文字が、私の頭の中に浮かぶ。


いや、でも。

私、何もしていないし。


いじめの原因になりそうなことは……。

思い当たらない。