東京ヴァルハラ異聞録

「出来……ませんよ。俺には、タケさんを殺すなんて……」


涙を流し、何度も首を横に振りながら久慈は呟く。


どうして俺が殺さなければならない。


生きてさえいてくれれば、それだけでも良いのにと、強く願っていたけれど、そうはいかないという事もわかっていた。


矛盾した想いが、久慈に武器を取り出させた。


「そうだ……それでいいんだ。秋本にも伊良にも俺の命はやらねぇけど、お前にならやれる。お前に出会えて良かった」


そう言って……篠田は久慈に笑顔を向けた。


「なんで……なんであんたはこんな時に笑ってられるんだよ!!ふざけるな!!」


久慈の手が動く。


大剣を篠田に向け、その先端を胸に当てて。


「さようなら……篠田さん」


「ああ、またな。久慈」


その言葉の後、久慈の大剣が篠田の胸を貫いた。


光の粒に変化しない、魂の死。


その一撃は、篠田だけではなく、久慈自身の胸にも大きな穴が空いたような寂しさを生んでいた。


涙を拭い、これからは篠田の代わりに西軍最強を名乗ると。


その重責に、俺は耐えられるのか。


怒り、悲しみ、不安……どんな感情を吐き出せば良いかもわからずに。


そして……ドアが開いた。