日本にいた時よりも華美な生活を楽しむこと1週間。
こちらの世界には日付と年にあたる単位しか存在しないらしく、週なんて言葉はないみたいだけれど、心の中で使うのは問題ないだろう。
大分勝手がわかってきて、お付きの人たちの扱い方も慣れてきた。
たった1週間でも慣れるものなのだなと思っていると、エリィさんにある提案を受けた。
「ラズリエル学園?」
「はい。何かに秀でている者しか通うことのできない、国で1番の学園です。
秀でているものは財力であったり学力であったりと人によって様々でございますが。」
「私が通えるのですか?」
この世界にはないスマホなどの物は持っているけれど、私自身が何かに秀でている訳ではないし、もちろんお金も持っていない。
日本ではそこそこの大学に入学できていたから頭が悪いわけではないと思うけれど、この世界の勉強ができるはずもない。
「問題ありませんよ。ミャアリサ様は黒い瞳をお持ちですから。」
「…黒い目でも、まだ魔法使い慣れてないですよ。」
瞳の色は魔法の適正を示していて、私の瞳は最高級に魔法に適しているらしい。
しかし魔法を使わない生活をずっとしてきた私にとって、魔法は身近なものではない。
だから決して秀でているものとは言えないはずだ。
「濃い瞳の方はそれだけで秀でていますから。魔法は学園で教われば良いのです。」
問題ないらしい。
まぁ問題があるなら提案してないとは思うけれど。
「もちろん通園にかかる費用は国が持ってくださいますのでお気になさらず。」
ということで、私はラズリエル学園とやらに通うことが決まった。
ここでは年齢に関係なく学園に通えるらしく、通っている人は様々なのだそうだ。
入学するタイミングもバラバラで、日本の学校とは全然制度が違うらしい。
知らない地に1人で通うのは不安だな。
常識も習慣も違うのだから特に。
そんなことを思っていたからか、意外なところから手が挙がった。
「私もミャアリサ様と一緒に学園に通わせていただくことになりました。」
「ルフレオさんが!?」
「はい。一度入学しましたが、騎士団に入団させてもらえることになったので退学しました。護衛対象であるミャアリサ様が通うのであれば一緒に通うのが最善だと思いまして。」
ルフレオさんって、若いのにすごい経歴の持ち主だったみたいだ。
騎士団がどれくらいすごいのかはわからないけれど、国で1番の学園から退学して入るくらいなのだから相当すごいのだろう。
それもそのはずか。
オッドアイで2つの属性魔法が得意な上に、片方の青い瞳はしっかりと色がついている。
色が濃いだけで秀でているとされるのだから、ルフレオさんが秀でていない訳がない。
…なんだかすごい人を護衛につけてもらったのかもしれない。
最初にそこそこの人だと思ってしまって申し訳なくなってきた。
「色々と手配をしておりますので、数日間は今までと同様に過ごしていただきます。ミャアリサ様が望むのであれば、ルフレオ様が魔法の指導をするそうです。」
「いいのですか?」
「問題ありません。」
それなら、お言葉に甘えて魔法を教えてもらおう。
ここはお風呂の文化がない代わりに洗浄魔法というものが普及している。
だからいつもエリィさんに魔法をかけてもらっていたのだけれど、自分でやれるようになりたい。
他にも便利そうな魔法を何度か見かけたから、それも教わりたい。
オッドアイのエリートであるルフレオさんが教えてくれるのなら、きっとうまくできるようになるはず。
そして翌日からルフレオさんの魔法講習を受けるようになったのだった。



