あれは夢じゃないのだ。
私は羽柴 湊に、学校イチ人気者の生徒会長な王子様に。
あのときの流れだとしてもファーストキスを捧げてしまったらしい。
「うわぁぁぁっ…」
思い出すと逆上せてしまいそうだった。
もう他に手が付けられなくなるから、学校でも思い出さないようにしているのに。
それでも家に帰れば確実に顔を見てしまう。
そして彼も前より優しい顔をしてくれちゃうから。
「ゆーず、入るよ?」
「えっ!?ちょっ、まって、」
「着替え中?お邪魔しまーす」
「うわっ…!」
───ドサッ!
動揺し過ぎてベッドから落ちた。
「なんだ、着替え中じゃないんだ。残念」
なに言ってるのこの人。
私の着替えなんか見たって微塵も効果ないくせに。
それにあのときのキスだって、こうして気にしてるのは私だけで馬鹿みたい。
「ど、どうしたの…?なにかあるならメールで教えてって言ってたよね私っ」
「すぐ隣に居るのにわざわざめんどい」
「…要件はなんですか」
ドアが閉められた。
「特にないよ」と笑いながら、男は傍に寄ってくる。
そもそも私はベッドから落ちたままだった。